越後発の新技術「高圧技術」が世界を変える

高圧技術の可能性

 飽食の時代も過ぎ、食に対する最近の社会的ニーズは、「安心」「安全」「健康」「高齢化への配慮」です。また、利便性優先の消費型社会の反省から、5つ目のキーワードとして、「環境」を踏まえた新しい食材加工の形態が模索されています。

 このような社会的背景の中で、食品に対する高圧技術の利用は、これからの社会的ニーズを満たす新しい加工方法になりうるものです。食品の安全性が大きな問題となっていますが、高圧処理を利用することによって、栄養素の破壊がなく、安全性を脅かすような物質が生じない食品を作ることができます。また、食品中のさまざまな薬理成分、機能性成分を増やすことができます。さらに、高齢化社会を迎え、軟らかく・飲み込み易い食品や、消化性を向上させた食品を作ることが可能です。

 野菜、果物、加工食品などの抗酸化力を示す新しい指標としてORAC値(※1)があり、米国を中心に食品への表示が進んでいます。我々は高圧処理によって、食品のORAC値が上昇することを発見し、世界に先駆けて研究を進めています。

※1:ORAC:Oxygen Radical Absorbance Capacity(活性酸素吸収能力)

 1992年に米国農務省(USDA)と国立老化研究所(National Institute on Aging)の研究者らにより開発された抗酸化力の新しい指標で、食品中の抗酸化力を分析する方法として優れており、現在、野菜・果物などの食品素材や加工食品に至るまで最もデータベースが充実した分析法です。

 もちろん、高圧処理は、食品加工だけでなく、生体細胞の保存やウイルスの殺菌、薬草成分の増強などにも利用でき、医療産業、健康食品産業に貢献できると考えられます。

 エネルギー効率について、加熱法と加圧法を比較すれば、水を1,000気圧まで加圧したときに失われるエネルギーは、同量の水の温度を1℃上げるエネルギーと大体同じ程度です。しかも、加熱法では、製品自体の加熱に有効に利用されるエネルギーは30~40%程度であり、しかも大部分が周囲に失われます。このようにエネルギー効率に関しても加圧法は加熱法に比べてはるかに経済的です。

 また、殺菌に関しては、圧力エネルギーは回収することができるうえに、16分の1のエネルギーで処理することができます。

 したがって高圧処理技術は、炭酸ガス抑制の意味からもクリーンな技術として普及されるべきです。人類の課題である環境問題に対して解決の一翼が担えることが期待されます。

 このように高圧技術は、人類のために非常に役立つ技術です。私たちは、図らずもこの激動の地球環境変化の時代に生まれ、この技術に接することができたことを幸福に思い、日々研究に励んでいます。

 今後、わが国が世界の中心となって、21世紀の食文化を担っていくことを願っています。


越後製菓㈱総合研究所スタッフ