越後発の新技術「高圧技術」が世界を変える

高圧技術の産業化

世界における食品への高圧技術の利用

■外国で開発されている商品

海外に目を向けるとアボカド、牡蠣、果汁、食肉など様々な高圧処理食品が市販されています。

■各製品への高圧処理による効果
製品 高圧処理による効果
カキの剥き身 カキの身の殺菌
殻から身を外し易くする
ディップソース 非加熱殺菌
サルサソース 非加熱殺菌
カットアボカド 非加熱殺菌
アボカドペースト 非加熱殺菌
ジュース 非加熱殺菌
ハム・ソーセージ 結着性の向上、低菌化

 日本における食品への高圧利用と比較すると、海外の考え方はあくまでも殺菌効果による賞味期限の延長に焦点が置かれております。

 わが国と海外との間で高圧処理の食品加工への応用に対する考え方に違いがあることは非常に興味深いことです。

■国内における高圧技術の取り組み

 国内では、1987年に林力丸教授が高圧の食品加工への応用を提唱したことをきっかけとして、1989年に農林水産省の支援のもとに、食品産業超高圧利用技術研究組合が組織されてから食品への高圧の利用の研究が加速しました。

 その後、高圧処理による食品加工はにわかに世界の注目を集めるようになり、1999年に「H・P未来産業創造研究会(会長 山崎彬)」が組織されました。そして、大学等の各研究機関と連携し、行政の支援を受けながら、様々な食品に高圧技術を利用した商品の開発・研究が進められております。翌年にはシジシージャパン「パスカリゼーションプロジェクト」が発足し、高圧処理食品を流通・販売することが可能となりました。

 一方、2007年には新潟県を中心に国の研究機関と連携研究体を組織し、「高圧基盤技術標準化機構」が設立されました。「標準基盤研究」を基礎に、「国内標準」及び「国際標準」の確立を目指しています。

 そして、新潟県が申請した「食の高付加価値化に資する基盤技術の開発」が(独)科学技術振興機構の2007年度「地域結集型研究開発プログラム」に採択され、当社も含めた新潟県内の民間企業(産)と大学・研究機関(学)、にいがた産業創造機構(官)が連携して高圧を利用した食品加工技術に関する研究・開発に取り組みます。

国内における高圧技術の取り組み図

H・P未来産業創造研究会

 H・P未来産業創造研究会は、高圧処理にかかわる新技術、特許の活用により消費者のニーズを的確に捉え、新市場に挑戦すると共に、新事業を創造することを目的に活動を行っています。

 特に長岡市及び新潟県の基幹産業である製造業の活性化のため「高圧処理による食品等の開発技術」の応用を研究しながら、商品実用化の導入を図っています。さらに、これに伴う企業の事業の高度化や、新産業の創生を図り、地域経済の活性化、雇用の創出を目指しています。

 会員は長岡市の食品製造関係、機械設備関係の企業を中心としてスタートし、長岡市が「高圧処理の丘(プレッシャー・ヒル)」と認識されることを夢見て、研究開発に取り組んでいます。

■当研究会を通じて開発された商品例
生ジャム まぐろの白だし/
とび魚の白だし
ポン酢ドレッシング すっぽん 炊き込みご飯
生ジャム まぐろの白だし/とび魚の白だし ポン酢ドレッシング すっぽん 炊き込みご飯
(有)ジェラートコートー
Patisserie Soleime
(ソレイム)
新潟県醤油協業組合 新潟県醤油協業組合 (株)浜鰻 (株)大庄

研究会概要

・代表者/越後製菓株式会社 代表取締役会長 山﨑 彬
・発 足/平成11年4月13日

<事務局>

〒940-0065 新潟県長岡市坂之上町2-1-1(長岡市商工会議所内)
TEL 0258-32-4500  FAX 0258-34-4500
E-mail:kaigisyo@cocoa.ocn.ne.jp

〒947-0193 新潟県小千谷市高梨町1003-1(越後製菓株式会社 食品研究室内)
TEL 0258-83-3288  FAX 0258-83-4479
E-mail:kenkyu@echigoseika.co.jp

シジシージャパンの「パスカリゼーションプロジェクト」

パスカルフーズ

 国内最大のコーペラティブチェーンの本部機能を担う株式会社シジシージャパンとH・P未来産業創造研究会が2000年に手を組んで立ち上げたプロジェクトです。高圧技術を利用した商品を開発し、販売につなげることを目的としております。開発された商品には「パスカルフーズ」の目印が付いています。

 「パスカルフーズ」は食品の美味しさを引き出し、健康で安全な食品を提供するために、新しい加工技術を開発・活用した商品。最新の技術を駆使し、より良い食品を創りあげたいという思いを込めたCGCグループオリジナル商品の目印です。

CGCチョイス
八穀ごはん/玄米ごはん
CGCチョイス
八穀こうじみそ
CGCチョイス
八穀玄米
CGCチョイス
八穀がゆ
八穀ごはん 玄米ごはん 八穀こうじみそ 八穀玄米 八穀がゆ

高圧基盤技術標準化機構

現在、高圧技術に関する研究は世界的にも注目されており、日本がリードしている分野も多いのですが、「国内基準(JIS)」および「国際基準(ISO)」等が確立されていないため、国内外での産業化や医療等の分野への応用に、数々の障壁が存在することが予想されます。

そこで、早急に「国内基準」および「国際基準」を確立し、産業化や質の高い医療の提供に寄与するためH・P未来産業創造研究会を始めとした新潟県と国の研究機関との連携研究体である「高圧基盤技術標準化機構」が設立されました。

行政の支援体制

■行政の支援によるこれまでの取り組み

 これまで、高圧技術の研究には、農林水産省、経済産業省、(独)食品総合研究所など、様々な行政による補助が行われてきました。

 この補助によって、高圧を利用した「越後のごはん」、「玄米ごはん」などの商品が開発されました。

行政の支援体制図

■産学官連携による「地域結集型研究開発プログラム」

 新潟県が採択された科学技術振興機構(JST)の地域結集型研究開発プログラムでは、今後5年間、新潟県と、県内の企業、大学を中心とし、高圧処理による「機能性富化技術」「物性変換技術」「システム安全性技術」の3つの領域について開発を行うものです。

  • 科学技術振興機構(JST)による「地域結集型研究開発プログラム」とは・・・
  • 研究開発テーマ
  • プレッシャー・ヒル(高圧技術産業都市)を目指して

地域結集型研究開発プログラム

地域として企業化の必要性の高い分野の個別的研究開発課題を集中的に取り扱う産学官の共同研究事業であり、大学等の基礎的研究により創出された技術シーズを基にした試作品の開発等、新技術・新産業の創出に資する企業化に向けた研究開発を実施するものです

<地域結集型研究開発プログラムのスキーム図>
地域結集型研究開発プログラムのスキーム図
(独)科学技術振興機構ホームページ http://www.jst.go.jp/chiiki/kesshu/gaiyou.html

研究開発テーマ

テーマ1 次世代型プロセスによる高機能・高付加価値食品の開発

 食品の機能性成分(例えばトマトのリコピンや、ブルーベリーのアントシアニンや、お茶のカテキンなど)は食品に含まれている酵素や微生物の反応によって生み出されます。

 そこで、高圧処理が引き出す食品素材の構造変化や、酵素反応を利用した、新しい食品加工技術を開発し、素材自体の機能性を富化した添加物を使用しない、安心、安全な食品の開発を行います。

 また、圧力を軸とした微生物制御や酵素制御技術の開発を行います。

次世代型プロセスによる高機能・高付加価値食品の開発

テーマ2 高圧を利用した物性変換技術の確立

 食品に高圧処理を施すと、食材の組織細胞が破壊され、食材が柔らかくなるなどの様々な物性変化が起こります。

 しかし、この組織細胞破壊などの構造変換メカニズムはまだ分かっていない部分が多くあります。

 そこで、圧力を利用した食材の物性を変化させる技術の確立を行います。また、これを利用して、圧力処理によって増粘多糖類などの添加物を使用しない、柔らかくて飲み込みやすく、そしておいしい高齢者用の食品の開発を行います。

高圧を利用した物性変換技術の確立

テーマ3 高圧に係わるシステム安全性確保技術の確立

 高圧処理がどんなに便利であっても、それを行う機械が高額で、安全性に欠くものであったら、利用に限界があります。

 そこで、世界初の試みとなる安全手法に基づく高圧装置の設計を行い、安全性が証明された、小型・軽量・低コストの高圧装置の試作を行います。さらに、高圧装置および高圧食品の安全認証、安全規格・標準を確立し、国際的流通を可能にします。

高圧に係わるシステム安全性確保技術の確立

プレッシャー・ヒルを目指して

 「地域結集型研究開発プログラム」は、新潟県、長岡市、各省庁、大学、各独立行政法人、そして企業が連携し、共同研究をすることで成り立っています。それぞれの技術を生かし、成果を挙げることで、産業化に必要な基盤技術研究、国際的に通用する標準化研究が進みます。

 今、高圧処理は、越後を代表する技術となり、世界をリードしています。この高圧技術が国内で標準化され、国際的に標準化されると、これからの未来に無限に広がる技術となります。この事業により、長岡の大花火のように様々な分野に用途が開き、高圧産業が地域に根付いていくでしょう。

プレッシャー・ヒルを目指して

 近い将来、越後製菓を中心として、長岡が、「圧力の丘」=プレッシャー・ヒルと呼ばれ、高圧技術産業都市として栄える日を目指し、日々研究に努めています。